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こだわり素材開発物語

第4話 モーリタニア産「壺たこ」PJ 吉原 隆之

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1991年にスタートした、モーリタニア産「壺たこ」プロジェクト。当初は、たこ壺そのものの製作にも試行錯誤を重ねていました。現地では、日本で一般的に使われている瀬戸物の入手が困難であったため、プラスチックの容器に、セメントや石を使って浮かない加工をプラス。その後試行錯誤を重ねながら、現在モーリタニアで使われている「たこ壺」の素材と形状に落ち着きました。

買付高が増える度に生産工場数は増え、現在はモーリタニア国内で10カ所の工場が稼働中です。現地に当社技術者を派遣し、当社による厳しい品質チェックや指導に基づいて、漁獲から水揚、サイズ・等級選別、凍結、冷凍保管、船積みまで、一貫した管理を徹底しています。長年のパートナーであるPCA社は、私たちと共同で専用たこ壺を製造すると共に「壺漁」の普及に尽力してくれています。また、多くの人手が必要となる「壺漁」は、モーリタニアの雇用の拡大にも繋がっています。

現地と取引する上で難しいのが、買付時の価格交渉とラマダン時期のスタッフへの生産指導です。特に買付け交渉では、近年モーリタニア産のたこに関する認知度や、水産品としての価値が高まってきているため、PCA社から強気の買付額を提示されることが多くなりました。漁獲量との需給バランスなどを説明しながら、半月以上かけて価格交渉を進めています。

一方で特長的なのが、ラマダン時期のスタッフへの生産指導。イスラム教徒であるモーリタニアの人々は、ラマダンを迎えると日が落ちるまで飲み物も食べ物も一切口にしません。体力も精神力も落ちるため作業効率が下がります。鮮度が命とも言える水産品にとって厳しい状況です。加えて、生モノを一切口にしないため「鮮度」の意味が伝わりにくいのも悩みの1つ。ラマダンの時期、いかに早く作業をしてもらうよう、彼らのモチベーションを上げてもらうのかがポイントなのです。

いずれも大切なのは、20年余りの取引の中で培った信頼関係だと考えています。現地スタッフとのコミュニケーションを築く中で、相手の想いや環境をきちんと理解しながら、こちらの意図を汲んでもらうように心掛けています

当社は、単なる商社ではありません。バリューチェーンを展開し、買付けしてきた素材をお客様のご要望に合わせて最適な形に加工して納品するという、トータルコーディネートを行っています。なかでも、水産加工の国内基幹生産工場であるグループ企業の(株)フレッシュまるいちで生産している「味付たこ」は、長年ご評価いただいている人気商品です。まさに水産業の川上から川下までを網羅している当社には、厳しいながらもチャンスの多い環境が用意されていると感じています。

現在日本で消費されている真たこのうち、約5割がモーリタニア産。漁獲量は毎年増加し、2012年は倍増となりました。一方モロッコでは、この3年間で漁獲量が一気に半減。モーリタニアの「トロール漁」70隻、「壺漁」6000隻に対して、モロッコは「トロール漁」はいまだ200隻、「壺漁」4000隻と、周辺海域での天然資源枯渇が心配されています。

「世界中の海からたこがいなくなる?」と心配されるほど、たこの数が減少している今も、モーリタニアでの成果から見えるように、「壺漁」は天然資源保護にもつながっています。今後は、モーリタニアに今も70隻残るトロール船を少しでも減らし、より一層天然資源保護に現地の方々と一緒に尽力しながら、“たこ質”の良いたこの生産にこだわっていきたいですね。

普段のお仕事をのぞき見!











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